Androidで業務アプリを開発し、それを社内の従業員に配布したい時、どのような方法が考えられるでしょうか。iOS向けと異なり、Androidでは実に多くの方法があります。

この記事では、Androidアプリの配布方法の紹介と、メリット/デメリットについて解説します。

基本的な手順

Androidアプリは、apkという拡張子のファイルとして生成されます。このファイルさえ手元にあれば、それを何らかの形で配布し、端末へインストールできます。まず公式に則った方法が考えられます。

Google Playストアを使う

Android公式のアプリ配布方法であるGoogle Playストアを使った方法です。この方法は、以下のメリットが挙げられます。

  • Androidの設定変更は不要
  • バージョンアップ時に自動更新できる
  • OSバージョンに応じてインストール対象外にできる
  • グローバルに配布できる
  • Android App Bundle形式による配布が可能

上記にあるAndroid App Bundleは、Google Playだけが対応したアプリ配布形式です。各デバイスに最適化されるので、リソースサイズが小さくなるメリットがあります。

逆にデメリットとしては、以下が挙げられます。

  • アプリは公開され、誰でもインストールできる

このデメリットに対しては、限定公開アプリとして配布する方法があります。

社内用の限定利用アプリでもGoogle Playストアを利用する場合には、Google Workspaceのビジネス向けエディションを契約している必要があります(限定公開アプリと呼ばれます)。

対応しているのは以下の契約形式です。

  • Frontline
  • Business Starter
  • Business Standard
  • Business Plus
  • Enterprise
  • Education Fundamentals
  • Education Standard
  • Teaching and Learning Upgrade
  • Education Plus
  • G Suite Basic
  • G Suite Business
  • Essentials
  • Cloud Identity Free
  • Premium

ユーザーは各自のmanaged Play ストアよりインストールを行います。

APKファイルを配布する

APKファイルを配布して、インストールしてもらう場合には、各ユーザーのAndroidデバイスにて「セキュリティとプライバシー」にある「提供元が不明なアプリをインストール」を許可設定にします。

この方法はGoogle Playストア以外のアプリストア(Amazonアプリストアなど)からAndroidアプリをインストールする場合にも必要です。

この設定を行えば、後はapkファイルをダウンロードできれば、自由にアプリがインストールできます。

例えば以下のような配布方法が考えられるでしょう。

  • メール
  • SlackやTeamsなどのチャット
  • クラウドストレージ
  • 任意のWebサイト

この方法は、自由度高く配布できるのがメリットですが、以下のようなデメリットもあります。

  • インストールを試みてはじめてAPIが適合していない(インストールできない)端末か分かる
  • 自動アップデートには対応していない
  • セキュリティリスク

企業利用時には、セキュリティリスクが一番の問題になるかと思います。インストール完了後に設定を元に戻せば大丈夫ですが、つい忘れていたりすると、フィッシング詐欺などによって不正なアプリをインストールしてしまう可能性があります。

USB経由でインストールする

各メンバーの端末を預かり、USB経由でインストールすることもできます。PCとAndroidデバイスをUSBケーブルで接続して行います。社内専用アプリを、責任者がインストールを実施する形であればこれも良いでしょう。

インストールにはadbコマンドが必要で、これはAndroid SDKの中に入っています。adbコマンドは開発者用のコマンドになりますので、各メンバーでインストールするよりも、担当者が一括インストールする場合に利用するものになるでしょう。

adb install (該当のAPKファイル)

この方法はUSBケーブルで接続したり、PCがないといけないといった手間がかかるのがデメリットです。

MDMを利用する

MDM(モバイルデバイス管理)を使うことで、デバイスの管理やアプリインストール/アップデートを自動化できます。Android対応のMDMとしては、下記などがあります。

多くは大企業向けですが、Android Enterprise Essentialsは中小企業向けのMDMとなっています。

メリットとしては、ビジネス用途での利用(デバイス管理)を考える上で必要な機能が盛り込まれていることでしょう。

デメリットとしては、多少の費用が発生することと、個人利用端末とは別での管理・運用が望ましいということでしょう。

iOSとの違い

iOSの場合はApple Developer Enterprise Program(以下ADEP)という企業向けプログラムがあります。

これは大企業向けのプログラムになりますが、社内向けアプリの配布やアップデートが可能です。なお、このADEPは不正なアプリ配布利用で使われてきた経緯があり、現在は利用審査がとても通りづらくなっているそうです。

また、別なプログラムとしてApple Business Manager(以下ABM)もあります。アプリをリリースする際に表示可能な組織としてABMで登録した組織を指定することで、社内限定アプリの配布ができます(アプリ審査の対象です)。

もう1つは非表示Appとして配信です。こちらはURLを知っている人だけがインストールできるアプリになります。こちらもABMと同じくアプリ審査の対象になります。

先に紹介したMDMの中にはiOSにも対応したものもあります。

まとめ

Androidアプリの配布は自由度が高い反面、様々な方法があるので迷ってしまうでしょう。開発時点ではURLやUSBでも良いですが、本番運用する際にはセキュリティや運用を考えた上での配布方法が求められます。今回紹介した方法を参考に、自社に適した配布方法を選択してください。