前編のおさらい

前回の記事では、Difyの基本的な使い方と、チャットボットにコンテキスト(文脈情報)を追加する方法について説明しました。

後編となる今回は、前編の基礎知識を踏まえて、社内QAチャットボットの開発について解説します。

RAGの高度な設定とチューニング

RAG(Retrieval Augmented Generation)は最新のAI技術で、検索機能と文章生成を組み合わせたシステムです。簡単に言えば、「必要な情報を検索して、その情報を基に的確な回答を生成する」という仕組みです。

Difyでは、RAGの設定を行うことで、より高度な質問応答を実現できます。

Difyでは、以下の3つの方法でRAGのためのデータを追加できます。

  • ファイルアップロード
  • Notionとの連携
  • Webサイトからのデータ取得

ファイルアップロードの場合、対応しているファイルフォーマットは以下の通りです。

  • テキスト(.txt)
  • Markdown(.md)
  • PDF(.pdf)
  • HTML(.html)
  • Excel(.xlsx)
  • Word(.docx)
  • CSV(.csv)

NotionとはAPIを介してデータを同期できます。

Webサイトの場合、クローリングAPIを提供しているJina ReaderやFirecrawlが利用できます。

テキストの前処理とクリーニング: 最適な回答のために

ファイルアップロードの場合、テキストの前処理を設定できます。自動でも良いですが、以下のような設定が可能です。

チャンク設定

  • テキスト分割サイズ:デフォルトは500文字
  • オーバーラップ:デフォルトは50文字
  • 適切なサイズ設定が文脈の理解度に影響

インデックスモードの選択

  • 高品質モード
    • LLMを使用
    • より正確な応答が可能
    • コストは高め
  • 経済モード
    • オフラインのベクトルエンジンを使用
    • コスト効率が良い
    • 基本的な質問応答に適している

検索設定のオプション

  • ベクトル検索
    • 意味的な類似性で検索
    • 柔軟な質問への対応が可能
  • 全文検索
    • キーワードベースの検索
    • 正確なマッチングが必要な場合に有効
  • ハイブリッド検索(推奨)
    • 上記2つを組み合わせて使用
    • より網羅的な検索が可能

社内向けUIのカスタマイズ

Difyで作成したチャットボットは、以下の3つの方法で公開できます。

1. 直接実行方式

  • URLを共有するだけで利用可能
  • 最も簡単な実装方法
  • 小規模なチーム向け

2. サイト埋め込み方式

  • HTMLコードをコピー&ペーストで実装
  • 既存の社内ポータルに統合可能
  • カスタマイズ性が高い

3. API活用方式

  • 完全なカスタマイズが可能
  • セキュリティ面で推奨
  • サーバーサイドでの実装が必要

一番簡単なのは「アプリを実行」でしょう。URLを共有するだけで、社内メンバーが利用できます。

「サイトに埋め込む」は、既存の社内ポータルの中に埋め込んだり、場合によっては外部向けにチャットボットを公開するのに利用できます。

APIリファレンスを使った場合、APIキーを使ってチャットボットにアクセスします。このAPIキーは公開しない方が良い情報なので、サーバーサイドでのAPIアクセスが強く推奨されています。

運用・改善と今後の展望

チャットボットは追加のコンテキストをベースとして、質問に回答します。Difyでは他にもテキストジェネレータやエージェント、ワークフローなど目的に応じてさまざまな形式が用意されています。

また、SlackやDiscord、Wikipedia、メールなど多数の外部サービスとの連携も可能です。これらを組み合わせることで、複雑なタスクを実行するAIエージェントを作成できるでしょう。

まとめ

Difyを使用することで、企業独自のAIチャットボットを効率的に開発・運用できます。オープンソースという特性を活かし、セキュアな環境で自社専用のソリューションを構築できることが大きな魅力です。

今回紹介した設定や機能を適切に組み合わせることで、より高度で実用的なAIボットの開発が可能となります。ぜひ、業務効率化にDifyを活用してみてください。

これから始める方は、まずは基本的な機能から試してみて、徐々に高度な機能を追加していくことをお勧めします。

Dify.AI · The Innovation Engine for Generative AI Applications