我々の周りには、目に見えない無数の無線信号が飛び交っています。身近なものとしては4G、5Gといったモバイルネットワークや、WiFiネットワーク、テレビのリモコンで使われている赤外線通信などが挙げられます。

今回は、ビジネスシーンでよく用いられているRFIDについて解説します。RFIDの基本的な仕組みや具体的な使用シーン、そしてどのように活用できるのかを考察してみましょう。

RFIDとは?

RFIDはRadio Frequency IDentificationの略で、非接触型の無線通信技術です。リーダーと呼ばれる装置が搬送波を発信し、RFタグがその搬送波の反射波にデータを乗せて送信します。リーダーはこの反射波を受信し、対象のRFタグのデータを取得します。

RFIDの具体的な例

RFIDには様々な種類がありますが、最も一般的に知られている例は、SUICAなどのFeliCaを代表とするカード型のRFIDです。これらのカードには電池がなく、内蔵されたRFIDを通じて、改札機のリーダーにカードをかざすことで、料金を支払ったりチャージしたりすることが可能です。マイナンバーカードも同様にRFIDを利用しています。

他には、車のスマートキーでもRFIDが使用されています。FeliCaやスマートキーのようなシステムは、10cm程度の近距離での利用が前提となっています。

一方、工場や倉庫などで用いられるRFIDは、より長距離の無線通信を利用しており、数メートル離れた位置からでも認識可能です。

RFIDの種類

大まかに分けて、RFIDは以下の3つの種類に分類されます。

  1. パッシブRFID
  2. アクティブRFID
  3. セミパッシブ/セミアクティブRFID

パッシブRFID

先述のSUICAはパッシブRFIDに分類されます。これはRFタグ側に電源を持たず、リーダーからの電磁波を利用して電力を生成します。パッシブRFIDの主なメリットは、RFタグ側に電源が不要なことです。これにより長期間使用が可能になりますが、近距離でなければ利用できないという制約があります。

アクティブRFID

アクティブRFIDは、電源(通常は電池)を内蔵したRFタグです。長距離での利用が可能ですが、電源が切れると利用できなくなります。電源が存在するため、センサーを搭載するなどの応用が可能です。電源を常に供給できる環境であれば、アクティブRFIDを活用することが容易になります。

セミパッシブ/セミアクティブRFID

セミパッシブ/セミアクティブRFIDは、アクティブとパッシブの中間的な性質を持ち、リーダーからの電波を受けたときだけ動作します。電池の消耗を抑えつつ、パッシブRFIDよりも長距離での通信が可能な特性があります。自動車レースのタイム計測などで使用されています。

RFIDの通信方式

RFIDでは主に2つの通信方式が用いられます。

  1. 電磁誘導方式
  2. 電波方式

電磁誘導方式

電磁誘導方式はパッシブRFIDに対して利用されます。リーダーとRFIDの間に磁界が発生し、RFタグに搭載されたコイルがその磁界を利用して電力を発生します。このときに用いられる周波数は135kHz以下の長波帯、または13.56MHzの周波数帯です。SUICAなどがこの方式を使用しています。

電波方式

電波方式は、平面状のアンテナを壁などに設置し、RFタグのデータを読み取ります。使用する周波数帯は900MHz(UHF帯)または2.45GHz(マイクロ波帯)です。2.45GHzは無線LANやBluetoothでも利用される周波数帯で、それらの電波の影響を受けやすいのが難点です。

RFIDの応用例

RFIDは個人利用ではSUICAなどの交通系カード、ビジネス利用では倉庫の在庫管理などに活用されています。RFタグの単価は年々下がっており、2023年現在では1枚あたり5〜10円程度となっています。そのため、アパレルなどの単品管理にも利用され始めています。

例えば、ユニクロの商品にはRFタグが付けられており、自動レジによる確実な金額計算が可能になっています。

工場などでは、在庫管理のために段ボールに貼られたり、単品ごとにRFタグを用いて管理されています。

RFIDのメリット

在庫管理などを考えると、以前はバーコードで管理するのが一般的でした。しかし、バーコードはリーダーを近距離に寄せなければならず、また曲がったり汚れたりすると読み取りにくいという課題がありました。

対して、RFIDはバーコードのようにリーダーを正確に向ける必要がなく、ある程度の距離まで離れていてもデータを読み取ることができます。また、RFタグが箱の中にあっても読み取ることが可能で、汚れやホコリに対する強度も高いという利点があります。

RFIDのデメリット

デメリットとしては、バーコードがほぼ単価ゼロであるのに対して、RFタグは1枚あたり5〜10円とコストがかかる点です。ただし、RFタグは年々低価格化しており、将来的にはさらに手に入れやすくなると予想されます。

また、RFIDを使って単品管理を行うためには、それぞれの製品にタグを貼り付ける必要があり、この作業にはそれなりの時間と労力が必要となります。

RFIDの通信プロトコル

RFIDに関連する主な標準規格には以下のものがあります。

  • ISO / IEC 18000
  • ISO 11784/11785
  • ISO / IEC 14443
  • ISO / IEC 15693

日本の対応規格としては、JIS-X-6321〜6323などがあります。これらの規格では通信パラメーターや周波数帯、衝突防止(コリジョン)についての規定があります。


以上、RFIDについての説明と具体的な使用例を解説しました。非接触でのデータ通信に加え、バーコードに比べて高い信頼性と便利性を持つRFIDは、さまざまなビジネスシーンで活用が期待されます。